看護師の人手不足を改善するのは、中々に骨の折れる問題だ。離職者に現場復帰をしてもらうにしろ、新たな担い手を増やすにしろ、時間がかかり短期的に状況を改善することは難しい。
しかし、人手不足が長く続くと、さらなる人手不足を招く確率は格段と高くなる。看護師が不足する職場で最も負担が大きくなるのは、現場で働く看護師だからだ。
人手不足になると看護師一人ひとりの仕事量は増え、勤務時間や休暇に融通が利かなくなる。同僚の大変さは自身が最も実感する形となり、個人の都合などを我慢する傾向は強くなってしまう。その結果、限界まで頑張った末に離職という判断をせざるを得ない状況に追い込まれてしまう看護師も少なくない。

また、看護師の人手不足は、患者や医療機関の経営にも影響を与える。
人手不足の現場を何とか回そうとすれば、看護師一人ひとりのパフォーマンスが落ちるのは言うまでもない。ギリギリの状態で働き続ければ余裕がなくなり、患者への接し方が雑になったり、細かいところまで目が届かなくなったりすることも増えてしまう。
たとえ医師の数が十分であっても看護師の数が足りないなら、手術を行うことはもちろん、入院患者を受け入れることも難しくなる。看護師の人手不足が招く影響は、患者にも医療機関の経営にも及び、何一つ良いことはない。

人手不足の現場では、既に頑張ってくれている看護師は保護すべき対象だ。しかし実際には、人手不足の弊害を最も被っているのは、その頑張っている看護師だ。
看護師の人手不足は、看護師だけの問題ではない。さらなる人手不足を生むことはもちろん、様々な面で悪影響を及ぼすことになるので、早急に手を打つ必要がある。